2007-11

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「日吉山王・祇園祭礼図屏風」に犬神人!

 11月15日(木)、大阪で会合があったので、ついでに大阪市立美術館で開催中の「BIOMBO/屏風 日本の美」に行ってきました。9月20日にも東京・六本木の東京ミッドタウンの「サントリー美術館」で見ましたので、2回目です。
 私の場合は、屏風を見るといっても、美的関心からという面と、部落史や賤民研究につながるような庶民の風俗にたいする関心という二刀流です。乞食や賤民を見つけては、「発見!発見!」と喜んで、その前で長い間、単眼鏡片手に見入っているので、相当片寄った見方かもしれません。(^^)v
 全国各地で展開されている部落史研究の中で、京都は特別な利点があります。それは、都があったという地の利が幸いして、多くの文献資料が残っているということもさることながら、京都を描いた絵巻物や屏風絵が多数残されており、目で見てわかる部落史・賤民史の資料が多いということです。慶長期(1596~1615)の「洛中洛外図(高津本)」に河原者の村が発見され、そこで働いたり洗濯をしている人々の姿が生き生きと描かれているのを見たときには、タイムマシンにでも乗って過去を直に見ているような興奮を覚えたものです。(源城政好「洛中洛外図にみえる河原者村について」(『京都部落史研究所紀要』2,1982年)
 そんなこともあって、今回も「賤民はどこじゃ、乞食・癩者はおらんかねぇ」と見ていると、作品リスト18番「日吉山王・祇園祭礼図屏風」(サントリー美術館蔵)に目をやってびっくり。なんと、祇園祭の御輿の前を、中世賤民の犬神人(いぬじにん)がゾロゾロ歩いているではありませんか。祇園祭の行列に犬神人がいるのは、「洛中洛外図」(上杉本)で知られており、10/28のブログの記事に書いたとおりなのですが、この屏風の絵は、それを遥かに凌ぐ細かさで描いてあり、しかも人数も多いのです。上杉本に描かれているのは6人ほどなのですが、こちらは10数人。また、服装の描写も、上杉本のように柿色の服を着ているだけでなく、網のようなものを上に重ねていたり、腰から何か蓑のようなものを垂らしているみたいで(もっと近寄らないと詳しくはわかりませんでしたが)かなり精密です。また、白いバンダナのようなものをかぶっているのは、上杉本と同じなのですが、上杉本では全員顔を出しているのに対して、こちらは顔を覆っている人が多く、顔を出しているのは一部です。これよりもっと古い時代の「親鸞聖人伝絵」(東本願寺本)の犬神人がすべて顔を覆っており、また、信長の時代の上杉本がすべて顔を出している。その中間(1500年代前半)に位置するこの「日吉山王・祇園祭礼図屏風」では、一部の人が顔を出しいるというのは、何かぴったりしていて、パズルの最後のピースがパチンとはまったような感じですね。
 また、上杉本の犬神人は、どこか呑気で、学生アルバイトが時代祭りの列でトコトコ歩いているような平和な感じをうけるのですが、この屏風の犬神人は、伊達や酔狂でなく、まさしく「警固」しているという緊張感があります。ふらふら近寄ったら、棒で殴られそうな気迫が伝わってきます。
 そんなわけで、今回は「大発見や!大発見や!」と興奮したのですが、よく考えてみれば、これほど有名な屏風にそんな大発見があるもんだろうか。単に、自分が不勉強なだけではなかろうか。
 そこで、とりあえずインターネットで調査しました。グーグルで「日吉山王・祇園祭礼図屏風」と検索してみると、2番目に「2003年度 白百合女子大学 共通科目 「日本中世史――『洛中洛外図屏風』の世界――」主要参考文献目録」(http://www.hi.u-tokyo.ac.jp/personal/fujiwara/shirayuri2003rakutyu.html)というなかなか有用なページがあります。部落史に関する文献もかなり網羅されていて、どれもいちおう見たことがあるものばかり。しかし、権威ある美術研究誌『国華』にあるいくつかの論文は、見たことがないけれども、なんだか関係していそうな気が…。
 そこで、京産大の地下書庫にもぐって該当の論文を確かめたところ、榊原悟「日吉山王・祇園祭礼図屏風」(『国華』1202号、平成8年=1996年1月、p.19)でアカデミックな考証を展開してあるなかに、「神輿の前後を、鎧や兜で身を固め、太刀をはき、長刀を持った犬神人が警固する」とありました。すごく、あっさり。12年近く前に、こんなことがわかっていたのか。トホホ。
 しかも、トホホついでに、今回の「BIOMBO/屏風 日本の美」の『図録』を見たら、2度びっくり。254頁の解説のところに、「祭見物の群集にまじって神輿の警固役の犬神人の姿…などもみうけられる」とあります。1周まわって元の位置、って感じですね。展覧会の図録にしっかり犬神人の存在が書いてありました。
 こんなわけで、我が大発見も、たちまち小発見にしぼんでしまったのですが、関心のあるかたは、是非見に行ってください。インターネットの割引券を印刷して持っていくと、100円引き。(割引券:http://osaka-art.info-museum.net/special019/biombo/biombo_01.pdf
 いってらっしゃーい。
 なお、展覧会は12月16日(日)までですが、入れ替えの関係で「日吉山王・祇園祭礼図屏風」は11月25日(日)までですので、お見逃しなく。ついでに、作品リスト84の「四季耕作図屏風」(オランダ・ライデン国立民族学博物館蔵)には、傀儡師(くぐつし)が人形を持って芸をしているところや猿回しの絵もあります。これなどは、唱門師系の賤民でしょうか。これは、期間中、入れ替えなしで展示されています。

・大阪市立美術館「BIOMBO/屏風 日本の美」10月30日(火)~12月16日(日)
   http://osaka-art.info-museum.net/special019/special_biombo.html

・目で見てわかる中世賤民史の資料については、週刊朝日百科70『日本の歴史 近世1-10賤民と王権』新訂増補版(朝日新聞社、2003年10月、500円)が比較的入手しやすく、著名な資料が網羅的に収録されている。ただし、現在は品切れ中。
   http://opendoors.asahi.com/data/detail/6048.shtml
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 また、記事のインポートやエクスポートができないので、他のブログへの引越しができないし、バックアップもとれません。
 その他、Yahoo!ブログは出来ることがあまりに少ないように思います。
 今まで書いたYahoo!ブログの記事をそのまま放置すべきか、こちらに貼り付け直すかは検討中です。まぁ、少ないから、手作業で引っ越してもいいのですが。ともかく当分は、Yahoo!ブログで見て下さい。

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